序破急

見てきた。エヴァの破。以下感想。ネタバレに近いので、まだ映画見てない人は読まないほうが良いかも。

TVシリーズではほんとにうざったいくらいにぐじぐじぐじぐじと人間関係と自意識を描いてきたエヴァですが、新劇場版では、そういううじうじした部分が好きだった「うじうじしたファン」たちを、庵野監督は切り捨ててると言っていいと思う。むかつくことに、基本的に登場人物はみんな通じ合ってるし信頼しあってる。そしてみんながお互いに通じ合ってて信頼しあってるということをみんなが信じている。根拠もなく。「ヤマアラシのジレンマ?なにそれ?」って感じ。「ATフィールド(心の壁)をめぐる物語」としてのエヴァを期待してるぼくの期待は、よくも悪くも裏切られた。まあそういう意味では正しく「破」だと思う。

まぁ庵野監督的には、謎解きに夢中になってるファンをTVシリーズ中に突き放したみたいに、今回はTV版に夢中になってるファンを突き放したのかも知れないけど、ぼくとしてはやっぱり腑に落ちない。これじゃ「ただのロボットアニメ」じゃないか。別にただのロボットアニメが悪いとは思わないよぼくは。けど、よりによってエヴァでそれをやる必要はないじゃないか。

ただまぁ、アスカのサービスカットは「普通のアニメ」的な意味で最高だったし、マリもぼく的には非常に好きなキャラだし、アクションシーンはもう一回見たいし、使途は最高にかっこいいし、街並みとか電車のギミックとかも最高にかっこよかったし、なんだかんだで面白かった。だからもう一度見に行くと思うしDVDもたぶん手に入れるだろう。

ひとことで感想を言えば、「アニメとしては面白いんだけど、エヴァでやるくらいなら新作でやってほしかった」という感想に尽きる。自分がこんなにTV版のエヴァに思い入れがあったことが驚きでもあるんだけど。今は、エヴァに入れ込んでる(入れ込んでた)自分を思いっきり否定された気分で、かなりつらい。「くだらない自意識なんて捨てろ」「人を素直に愛せ」みたいなメッセージ、もう嫌気がさすくらいいろんな媒体で受け取ってるよちくしょう。バカみたいだと思われるかもしれないし、キモいと思われるかもしれないけれど、たかがアニメ映画をみてものっそい落ち込んでいる。

今回の破のテーマ自体は、TVシリーズと同じくひととひととのつながりなのだろうとおもう。それがレイの「ぽかぽか」発言とかアスカの気遣いとか、に現れている。いやになるほど繰り替えされる「相手への思いやり」という陳腐なテーマ。「自分から相手を喜ばせようと思わなければ何も救われない」なんてことは、その通りだと思うし何も間違っちゃいないけど、それでも。

旧版では救われなかったシンジたちが救われるためには、たしかに「相手への思いやり」とか「自分から何かを伝えること」という当たり前のことを地味にこなしていくしかない。けど、この描き方はひどすぎる。破では、旧作であった「痛み」や「相手の拒絶」が見事に排除されてて(みんな基本的に互いを信頼しあってる)、相手へのいたわりみたいなものが強く押し出されている。でもそれって結局、「内向きなダメな自分」を否定して、捨ててるだけなんじゃないの? それじゃあ「内向きだったシンジ」は救われてないじゃん。彼が(ぼくが、と言ってしまいたい)救われる要件は、「内向きを捨てる」ことじゃない。「内向きに痛みを感じながらも、それでも外に向かうこと」だ。他者の拒絶とか、ひとと向き合う痛みとか、そういうものがきちんと描写されてない破は、そういう意味ではただの「説教」にしか見えなかった。これだったら痛みを感じながらも最後に他者を求めた旧版のほうがよほど救いがあるよ。たとえアスカに「きもち悪い」と言われようと。

ところで、今の彼女と付き合うようになってからぼくは大分満たされて、(昔に比べれば)人に対しても大分優しくなれたと思うし(昔の友人からはよく「丸くなったね」と言われるし)、不安も大分減った。それでもいまだにぼくはみんなから見捨てられる不安は強いし、自意識に押しつぶされそうになったりする。けれどぼくはそういう自分のダメな部分を見捨てられないし、見捨ててしまったら自分が自分でなくなってしまうとも思う。だから、やっぱり「ダメな部分を見捨てる」物語になってしまっているエヴァの破は、ぼくにとってはかなりきつくてつらいものだった。そうじゃねーだろ庵野。それじゃあ旧版のシンジだって救われないだろ。それは旧版の「単なる否定」だろ。

ああ、気がくさくさする。「お前のその歪んだ自己愛を完全に捨てない限りお前は幸せになれない」と宣言された気分だ。

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コメント(1)

 通りすがりのものです。
 この文章読んですげー正論だと思ったのでコメント。
 
  俺も上でも言っているようにロボットアニメとして純粋に楽しんでたけど、やっぱり破は作品自体が軽すぎると思った。
 TV版があそこまで心情表現ばっかりで鬱屈とした内容だったのに今回のは性格自体が変わってるから話が全然違う。
 そこを変えたのは確かに自分を否定された気分になるのかも。
 俺はシンジのような考え方はしないのでそういう気分にはならなかったけどそう感じる人間はいるんだと思った。
 この序破急の感想は俺が見た感想の中で一番的を射ていて一番製作者(庵野監督)に見せたいと思った。まさしく正論と呼ぶにふさわしい。

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都内在住プログラマ。男子。

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